![]()
嘗て米国が、レーガン大統領の下、知的財産を柱とした政策(プロパテント政策)により、見事に景気を回復させたことをご存じでしょうか?これと同様の政策(知的財産戦略)が、我が国において2002年に「知的財産戦略大綱」として纏められたことをご存じでしょうか?
「知的財産戦略大綱」によれば、我が国も、「知的財産立国」の実現に向け、政府が種々の制度改正を行うとし、実際に制度改正が実施され始めました。
ですから、中小企業の社員の皆様も「知的財産とは何?」などと言っていると、景気回復(立国)の波に乗れなくなってしまいます。
では、「知的財産とは何?」。知的財産とは、「人間の精神的な創作活動の結果生じた無形の創作物に関する権利及び営業上の標識であって財産的な価値の有るものに関する権利」をいいます。その代表的なものとして、産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)、著作権があり、余り知られていないものとして、育成者権(種苗法)、半導体集積回路配置権等があります。ご存じかも知れませんが、ここで、「特許権」は、発明を独占的に実施することができる権利であり、「実用新案権」は、物品の形状等に係る考案を独占的に実施することができる権利を言います。また、「意匠権」は、物品のデザインを独占的に実施することができる権利であり、「商標権」は、マーク(例えば、SONY、朝日新聞等)を独占的に使用することができる権利を言います。さらに、「著作権」は、思想又は感情を創作的に表現した文学、美術等の範囲に属するものを、他人に勝手に利用させない権利をいいます。
ところで、自分(自社)がこれら権利を取得している場合は良いのですが、他人(他社)が取得している場合には驚異です。即ち、企業が活動を行うフィールド上には、知的財産権という「地雷」が広範囲にわたって多く配置されているようなものです。これら「地雷」を踏んだら、企業が傾く事態すら生じ得ます。しかしながら、知的財産権について少し知識を持てば、どの辺りに地雷が有りそうかを判断することができるようになり、場合によっては、知的財産権の専門家(弁理士)に相談して敵の陣地(ライバル企業の独占市場)に攻め込んで行くことも可能になります。では、皆さんは、どの位、知的財産権の知識をお持ちでしょうか。次のレベルチェックを行ってみて下さい。
|
次の質問1〜5のうち○は幾つあると思いますか ? 質問1)自分が特許権を取得している限り、その特許権に係る発明品を製造したときに、他人から特許侵害と言われることはない。 質問2)今までにない特殊な具を入れた新規の餃子を発案したが、家庭でも作ることができる食べ物であるから特許権を取得することができない。 質問3)特許と実用新案の何れでも出願することができる発案を行った場合には、実用新案権より特許権を取得したほうがよい。 質問4)商品名が商標権として取得されている目薬に対し、その目薬のパッケージの色彩だけを真似して異なる商品名を付けた目薬は、合法的なものであるから訴えられない。 質問5)自分が出資して購入したディズニーのビデオを、自分が経営する喫茶店内のテレビで上映することは許される。 |
いかがでしょうか。では、質問1から検討していきましょう。
質問1:「自分が特許権を取得している限り、その特許権に係る発明品を製造したときに、他人から特許侵害と言われることはない。」
「○に決まっているじゃないか。高い費用をかけて特許権を取得したのだから」。
いいえ違います。正解は「×」です。例えば、以下のような場合を考えて見て下さい。中小企業Aが、従来からある「使い捨てカイロ」の一面に、新規に「粘着面」を設けて「貼り付け式使い捨てカイロ」を発明し、特許権を取得したとします。しかしながら、従来から知られている「使い捨てカイロ」に関しては、他の大手企業Bが特許を取得していました。この場合、中小企業Aが自社発明の「貼り付け式使い捨てカイロ」を製造するときには、大手企業Bの「単なる使い捨てカイロ」も同時に製造することになり、大手企業Bの特許権を侵害することなります。従って、質問1の答えは×です。また、上記の場合、中小企業Aの特許権と大手企業Bの特許権とが「利用関係」にあるといい、中小企業Aの知的財産担当の方は、十分に注意しなくてはなりません。そうしなければ、「貼り付け式使い捨てカイロ」が大ヒットした折には、これを面白く思わない大手企業Bから膨大な損害賠償を請求されることになります。
では、次に質問2に移りましょう。
質問2:「今までにない特殊な具を入れた新規の餃子を発案したが、家庭でも作ることができる食べ物であるから特許権を取得することができない。」
「我が家でも作れる餃子なんでしょ?だったら、特許権なんか取得できない。だから、答えは○」。
いいえ違います。正解は「×」です。我が家で作ることができる餃子を、冷凍食品やお総菜にして作っている食品会社が有りますよね。ある食品会社Aが、苦労して開発した真餃子を他の食品会社Bが勝手に真似することが許されるとしたら、開発意欲が減退して食品産業が発展しなくなります。特許庁は、特許出願することで世の中に発明を開示したものに、そのご褒美として特許権を付与し、これにより発明意欲を喚起して産業の発展を図っているのです。また、実際に食品関係の特許も多く認められています。従って、答えは「×」です。
次に質問3に写りましょう。
質問3:「特許と実用新案の何れでも出願することができる発案を行った場合には、実用新案権より特許権を取得したほうがよい。」
「ひょっとして、質問の答えはみんな×ではないの ? だから×」。
そのような選び方はダメです。知的財産権に限らず裁判となった場合には、理由が大切だからです。本問の正解は「△」です。○ではありませんが、×でもありません。○でない理由としては、特許では出願後、審査を経て特許権が付与されますが、実用新案では、出願さえすれば原則として無審査で実用新案権が付与されます。また、特許の審査は、最低でも約2年待たされ、審査結果が思わしくない場合には、特許権付与までに10年以上かかる場合もあります。そこで、例えば、「たまごっち」のようにライフサイクルが短い発明品に関しては、特許出願をしてもブームが去った頃にやっと特許権が付与されるという事態が生じ得ます。これに対し、実用新案権では、出願から約6ヶ月で権利登録されるので、ライフサイクルが短い発明品に関しては実用新案権が有効です。
しかしながら、実用新案権は、無審査で権利が付与されるので、権利を行使する際に一定の制限が課せられます。また、実用新案権は出願から6年で消滅します。これに対して、特許権は、特許庁の審査を経て付与されるので、権利行使の際に、実用新案権のような制限は課せられず、しかも、特許出願から20年まで権利が存続します。これらの意味において、企業の主力製品等に関しては特許権を取得した方が有効です。従いまして、質問の答えは、「○」でもなく「×」でもなく、「△」です。
次に質問4について検討してみましょう。
質問4:「商品名が商標権として取得されている目薬に対し、その目薬のパッケージの色彩だけを真似して異なる商品名を付けた目薬は、合法的なものであるから訴えられない。」
「いわゆる、バッタもの(模倣品)は、薬局でもよく見かけるから、きっと合法的なものだと思う。だから答えは○」。
みんながやっているから合法的なものとは言えません。具体的には、質問における模倣品は、一定の制限の下、不正競争防止法によって禁止されており、正解は「×」です。大雑把にいえば、他人の信用を無断で使用する行為を、法律は許しません。うまい具合に購買者を欺くことができそうだと画策している場合は、大抵、非合法的な行為であるので、大きなしっぺ返しがあることを忘れないでください。
次に質問5について検討してみましょう。
質問5:「自分が出資して購入したディズニーのビデオを、自分が経営する喫茶店のテレビで上映することは許される。」
「質問4と同様に、ディズニーのビデオの効果にただ乗りして喫茶店を繁盛させることになるから、答えは×」。
正解です。ディズニーのビデオを購入した行為によって、そのビデオを個人的に楽しむことは許されますが、公衆に直接ビデオを見せる権利(上映権)までも取得してことにはならず、著作権法に触れるので、答えは「×」です。
以上、質問1〜5のうち「○」の個数は、「0個」が正解です。ここで、5問中、8〜10割が正解で理由付けもできた方は、きっと知的財産権について勉強されている方なので心配はないでしょう。4〜8割が正解だった方は、知的財産権の一部(例えば、特許権)のみならず、著作権、不正競争等を含めた知的財産権全体について勉強して見てください。正解が4割未満だった方は、先ずは、新聞に掲載されている知的財産権に関する記事は必ず読むようにして、興味をもつことから始めましょう。そして、単純な疑問・質問を抱いた場合には、特許の無料相談所の門を叩いてみてください。
無料相談所では、知的財産権の専門家である弁理士が対応してくれます。無料相談の場所等に関しては、
弁理士会東海支部(
TEL052−211−3110)に
お問い合わせ下さい。
